建設業界が直面している大きな流れ・問題に対して、私たち「建設×IT」スタートアップが担うべき役割・解決すべき課題はどんなものなのでしょうか。
ここでは私たちシェルフィー株式会社が業界課題をどう捉えているのかを記載しています。
建設業界最大のニーズであり課題である「生産性の向上」を成し遂げるには、
「分母となる人手を増やす」「今ある人的リソースでより多くの仕事をできるようにする」
の2つの方向性があります。
人手を増やす施策として外国人の受け入れ等が話題になっていますが、
どのみち入職者を増やすというのは一朝一夕で成し遂げられることではありません。
一方で、今ある100のリソースをそのまま100使えているかというと、
当然ながらそうではなく、私たちはここにこそ業界としてののびしろがあると考えています。
まずは無駄なく有効に、なるべく100に近い数字で人的リソースを活用できる状況を生み出し、
その先に待遇の改善やイメージの向上等による、
100だった分母が110,120になる量への転換もあると考えています。
建設分野におけるITスタートアップの役割は、
工事の「外」に発生する業務の効率化によって業界に貢献することだと考えています。
工事「中」の業務は、数百年規模の歴史と伝統の中で常に改善が繰り返されているのに加え、
近年では前述のドローンや自動運転の建機など最新のハードウェアが取り入れられています。
一方で、工事「外」にある営業や打ち合わせ、書類作成などの業務に関しては
昔のやり方からアップデートされておらず、現場の負担になっている面が多くあります。
この分野こそ、ソフトウェアを得意とする私たちが
「本業であるものづくりに集中できる状況」を生み出すべきで、
そのために必要なことが「①リソース配分の最適化」と「②人がやらなくていい仕事の省力化」の2つです。
建設業界は1つの現場に関わる事業者が非常に多いのが特徴であり、
大規模な現場になると、関係会社は1,000社を超えることもあります。
元請け→一次請け→二次請け…といった縦の構造から、壁・電気・家具といった業種毎の横の構造まで、
「どの会社が」「誰を」「どのタイミングで」「どの現場に送るか」という複雑で巨大な情報を整理し、
リソース配分を最適化できれば非常に大きなインパクトが生まれます。
そうした「最適なリソース配分」を実現するための勝負ポイントは下記の2つであると考えます。
まずは発注者の視点から。
例えばレストランを探すとき、検索をかければ食べログ・グーグルなど
詳細な情報にレビュー付きで選択肢を比較することができます。
こういった情報の整備はBtoCだけでなく、BtoBでも浸透しつつありますが、
こと建設分野においては、自分たちの作りたいものを
「適正な価格で」「品質高く作れて」「いま動ける」会社を探し、
比較する手段がほとんどありません。
質が高くて量が少ない情報も、量だけがあって質が低い情報も価値がなく、
「正しくて」「使える」情報を集め、公開する場が必要なのです。
「正しくて」「使える」情報を定義できたとしても、
それらが自然と集まる仕組みを構築しなければ絵に描いた餅で終わってしまいます。
例えば、ある会社がとてもいい仕事をして、発注者が大満足であっても
現状ではそれらを残す場所がなく、その情報は当事者間でしか共有されません。
建設業界には非常に高い技術を持った会社・個人が多くあるにも関わらず、
それらの実績・評価を蓄積する仕組みが存在していませんでした。
成果を残した会社や個人が見える化されることで、
評判の良いところは受注単価を上げることができ、
担い手の増加といった様々な副次効果も見込めることでしょう。
工事「外」の業務の中には、
高度な技術やコミュニケーションを必要とする「人でないとできないこと」と
しょうがなく誰かがやっている「人がしなくてもいいこと」の2つが混じっています。
このうち「人がしなくてもいいこと」を省力化するのはITの得意分野であり、
これまでの商習慣や仕事の進め方にはリスペクトを持ったうえで、
「本当に人でないとできないのか?」を突き詰めることこそが、
IT企業が担うべき役割であると考えています。
上記の「人でなくていい仕事」を減らしていくうえで障壁となるのが、
電話やFAX、PCをコミュニケーションの中心においてきたこれまでのやり方です。
当然ですが、いい仕組みやサービスをつくれば自然と浸透するわけではありません。
ときにレガシーと呼ばれることもある環境や業務の進め方を脱却するためには、
心理的抵抗を含めて、一人一人の感情面に寄り添う仕組み・サービスである必要があります。
「このやり方がベスト」という解を提示するだけでなく、それらが実際に浸透し、
当たり前に使われるところまで責任を持ちたいというのが私たちのスタンスです。
・自然を相手にするため、天候や地層などの環境に影響を受けやすい
・同じものを二つとして作ることがない完全受注生産
・大きな工事であれば数年がかりで完成させる
といった特徴から、建設業ほど不確実性の高い業種はないと言えるかもしれません。
そのため例外ケースが非常に多く、各社によってやり方も異なるため、
ITが得意とする「仕組み化」が非常に困難です。
その中で最適解を生み出し、それらを実務に落として波及させていくことが求められます。