人事と広報を同じ部署にした話:なぜスタートアップにブランディングが必要なのか?
今回は人事と広報の機能を一緒にした結果ブランディングに力を入れられるようになって良かった!という話をしたいと思います。
人事と広報と聞くと、会社の規模によっては業務内容が大きく異なるイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、周囲のベンチャーやスタートアップを見渡すと、この2つの部署を1人だったり1つの部署が担っているところをよく見かけませんか?
シェルフィーでは「ブランドマネジメント(以下:BM)」という名前の部署が、人事と広報の2つの機能を担っています。(似た名前のQM:クオリティマネジメントに関してはこちらを参照ください。笑)
弊社でこの2つを統合した理由はその名の通りその方がより強いブランドを構築できるからなのですが、今回は「まだ20名ほどのスタートアップがなぜブランドを重要視しているのか?」「広報と人事を一緒にすることでどんなメリットがあったのか?」について書こうと思います。
そもそもブランドとは?
ブランド=ロゴマーク?高級感?
まずはそもそもブランドって何?というお話から。ご存知の方も多いかもしれませんが、「ブランド」の起源はある牧場が自社の牛の肉を見分けるために専用の刻印を押していたところ、その刻印が付いている牛肉=美味しいと噂になり、その刻印自体が価値を持つようになったというところから来ています。(真偽のほどは議論があるそうですが)
上記のエピソードからも分かるように、ブランドとは企業のロゴマークやルイヴイトンのような高級さを指すのではありません。じゃあブランドって何?ということなのですが、これに関しては現在も様々な議論があり、人によって定義が異なります。より知りたい方は関連書籍がたくさん出てるのでそちらをお読みください。笑
「ブランドとは何か」については諸説ある中で、個人的にもっともしっくりくるのは「ブランド=右脳で想起されるもの」という定義です。「コカ・コーラ=爽やか」、「北海道の食べ物=美味しそう」というようにロジックではなく、何となく脳裏に浮かぶものこそがブランドであるとここでは考えてもらえればと思います。
なぜ会社とってブランドが大切なのか?
前述したとおり、ブランド=右脳で起草されるものという定義だとするとそこに良し悪しは存在しません。では、なぜこれがビジネスにおいて重要なのかというと、”ブランドが強い”と会社にとって以下のようなメリットがあるからです。
ブランドが強い”と…
・顧客のロイヤリティが高まる
・価格以外での競合優位性の強化
・採用力の向上
・社員の離職率の低下
・マーケティングや採用といったコストの削減
・出資や投資が集まりやすくなる
といったメリットがありますが、逆にブランドが弱い”と…
・価格競争に巻き込まれやすくなる
・新規ユーザーがなかなか来ず、来ても競合に移りやすくなる
・採用やマーケティングコストの増加
・投資や出資が集まりづらい
といったデメリットがあります。
上記を見れば、”ブランディング”の重要性をお分かりいただけると多います。会社にとってのブランドは人・モノ・金・情報といったものと同じくらい大切な、会社の成長や業績に貢献する経営資源であると言えます。シェルフィーではここに投資をしていくことは非常に重要であると考え、創業当初からブランディングには力を入れています。
ブランドはどのように作られるのか?
ではどうやってブランドを強化=ブランディングするのかというと、下記の好循環を生むことです。
①自社に合う人を採用し、強い組織をつくる(HR)
②提供しているサービスの価値が向上する
③発信の量と質が向上する(PR)
→①に戻る
当然ながら②の事業やサービスがあってのブランディングなので、実態のないままブランディングだけしても意味がありません。しかし②が非常に良いのにも関わらず、ブランディングに力を入れていないばかりに、採用やマーケティングで苦労しているスタートアップは意外と多いのではないでしょうか?
さらに言えば②の事業のところでより良いサービスを作り、ユーザーに価値を提供するためには、①で会社のビジョンを定義・浸透させ、自走できるような強い組織を作っておかなければいけません。そうして生まれた良いサービスやチームを③を通して積極的に世の中へ発信することで、共感してくれるユーザーが集まったり、採用が楽になったりと、より①②を加速してくれるようになります。
そこでシェルフィーではBMのミッションを「人とビジョンをつなぎ、会社のくるべき未来を早める」とし、採用広報(watedly, 社員インタビューなど)・組織開発(制度設計、採用スキーム、インナーブランディングなど)・サービス広報(メディアリレーション、ユーザーイベントの実施など)を全てBMの担当業務としたところ、下記の2点が劇的に改善されました。
広報+人事→”ブランドマネジメント”にして良かったこと
1. とにかく動きが速くなった
人事と広報が同じだと、どの社員どういったプロジェクトに携わっていてそれがいつ頃リリースされるのか、追加でどんな人材が必要なのかがチーム全員に共有されています。
そのためサービス利用事例など社内協力を必要とする取材の対応にも迅速に対応できるようになり、採用広報においてはどんな人材が必要になるかを考え、逆算してPRが出来るようになりました。
また単純に統合したことでリソースが2倍になったので、先日のユーザーを集めたイベント(詳しくはこちら)も決定から2週間で開催にこぎつけるなど、ある程度リソースが必要な施策を行うときにも迅速に実行できます。広報や人事の人数が多いスタートアップやベンチャーというのはあまりないと思うので、そのときの会社の状況に合わせてHRとPRの間でリソースを調整できるのはメリットが大きいと思います。
2.最適なチャネルやメッセージを選択し、発信できるようになった
従来のブランディングといえばメディアを使ったものが中心だったので、PRとHRの業務が重なることがなく、分業が上手くいっていたのかもしれません。しかし、採用ブランディングやインナーブランディングの重要性が高まっている中で、両者の連携は不可欠になりつつあります。
そこでよくあるのが、「wantedlyブログはどっちが書くのか?」「このイベントはどっちが担当?」のようにタスク毎にHRマターなのか、PRマターなのかをいちいち検討しなくてはいけないという問題です。さらに広報と人事で連携して進めるとしても、”相手のKPIのための一時的な連携”なのと、”そのKPIを自分事として追っている”のとではアウトプットの質が大きく異なります。そこで弊社ではPRもHRもチームとして採用数、掲載数、発信数などといったKPIを追うことにしました。
さらにリソースの調整が容易になったので、その時々でアプローチしたいターゲットを設定し、キーメッセージとそれを伝えるチャネルも柔軟に変えられるようになりました。SHELFYはBtoBのサービスなので、基本的にはユーザー向けのブランディング=雑誌・新聞などマスメディア、採用向けのブランディング=WEBを中心としていますが、例えば採用のための代表インタビューでは旧来型のマスメディアを使ったり、逆にユーザーの認知度向上に向けたコンテンツをWEBに出すこともあります。
そうしてその時々で会社がアプローチしたいターゲットに合わせて伝達手段や内容を尖らせることで、、「◯◯を見て、取材したいのですが〜。」「◯◯を読んで応募しました!」と言ってもらえることが格段に多くなりました。
ブランドという視点で自社を見直す
PR=マスメディア・リレーション、HR=採用・労務??
これまではPR=マスメディアとの関係作り、HR=採用や労務という業務が主であったと思います。しかしマスメディアのプレゼンスが下がり、ソーシャルメディアの更なる伸びが予想される今、「自らがメディアとなり世の中へ発信していくPR」が求められていると感じます。事実アメリカのスタートアップのPRを見ていると、どのスタートアップもブログで積極的に発信しており、メディアに載るとしても寄稿という形が多く見受けられます。
またHRにおいては、スタートアップは人が足りないあまりに採用数だけを追う人事が多く生まれた結果、その後において組織が原因で失敗したスタートアップは後を立ちません。また、組織は事業と違って一度つまづくと大手術が必要となることが多く、リカバリーが難しいので、「自社のビジョン実現のための最適な組織の形を経営視点で考え、採用や制度に落としていく力」が今後のHRにはより求められていくと思います。
スタートアップこそ”ブランド”に力を入れるべき
そのように両者の業務が従来とは異なりつつある中、人事と広報にブランドという軸を通すことで、該当部署以外の社員にも「自分たちは自社のブランドを担っている」という認識を持ってもらうことができました。社員=その会社のイメージになりやすいスタートアップこそ、社員にこの意識を持ってもらうことは重要だと思います。
例えば、外資系のメーカー等には必ずといっていいほどブランドを管理・統括する部署があり、値引きなどの短期的なキャンペーンによって売上が上がったとしても、長期的に考えてブランドを毀損していると考えられる場合は成果を認めないといったことを行っていたりと、”ブランド”というのはかなり重要視されています。
とはいえ強いブランドが形成されるには時間がかかり、一朝一夕ではできません。ゆえにマーケティングや採用にコストをかけられないスタートアップこそ、当初のうちからブランディングに力を入れておけば、その投資対効果は非常に高いのではないでしょうか。
単に人事と広報を統合するのではなく、まずは自社の事業や組織をブランドという軸で見直し、自社に合った答えを探すことをオススメします!