デザイン始めて10年目。僕にとってのデザインの正体とは
はじめまして!
シェルフィーでデザイナー・webマーケターをしている石川です。
弊社サービスをたくさんの人に利用してもらうためにアレコレ考えて実行し、必要であればサイトの見た目を整えて、なんてことが主な仕事内容です。
さてこの記事では、ITベンチャー界隈であんまり耳にしないなーと思っている「デザインの本質」みたいなことについて書いていきます。
「デザインとは?」みたいな話って実はあちこちで語り尽くされているのですが、IT界隈に限ってほぼその話が出ない感覚があります。
なのでこの場を借りてお話を。
と、その前にまず自己紹介。
デザインに疎い輩がデザインを語っても信憑性ないので、自分がどんなデザイン遍歴かってのを書いときます。ちょっとでも説得力を持たせるためにね!
大学時代
僕は愛知県で生まれ育ち、愛知の公立芸大の美術科デザイン専攻でデザインについて学びました。大学では玉石混交の石のほう。
大学の方針は「技術は後でいくらでも習得できる。正しい考え方を身につけなさい。」というもの。
グラフィック・プロダクト・環境デザイン・無形のデザインなど、様々なモノやコトづくりの0から10までを幾度となくこなしながら、ただただひたすらに「デザインってなんなんだろう」「自分にはデザインの力で何ができるんだろう」という哲学チックなことをコンコンと考え続けた大学四年間でした。
その時の作品たちがコイツ。
いま見るととっても恥ずかしい!
就職
卒業後は東京のデザイン事務所で、二年間ほど仕事をすることになります。
だいぶイレギュラーな方法で働くことになったこの事務所は、世間一般のデザイン事務所とはだいぶ違ったこれまたイレギュラーな環境。
そこでも広告・本・内装・オフィスデザイン・webなど、大学時代と同じように様々な領域の仕事をこなしていきました。
ひたすらに実務経験を積みながら出来ることを増やしていき、デザインについて浅くも深くも考える。
そんな修行のような二年間を過ごさせてもらいました。
そして、シェルフィーへ
大学でデザインの考え方を学び、前職で実務のスキルをある程度身につけました。
そして「自分が武器にしていきたいのはweb系のスキルだな。」と腑に落ちた段階で、より専門的な方向へ身を置こうとシェルフィー株式会社に転職。
とってもいい会社だよ!とか言い始めるとキリがないので割愛。
一つだけ言っておくと、とってもいい会社です。
デザインの守備範囲ってとっても広いんです
さて続きまして、この記事で「デザインとは?」って話をする理由を書きます。
一口にデザインと言っても、DTP・パッケージ・タイポグラフィ・広告・製品・建築・見えないデザイン……。など、その守備範囲は世の中のあらゆるモノゴトに及びます。
デザイナーという人たちはまず広くデザインを学び、その経験の中から得意や興味・達成したい目的などを加味して自分の専門領域を選び深掘っていくというのが通例です。
ところがことITベンチャー界隈に関しては、少し特殊な傾向が見受けられます。
それが、
「入り口がwebデザイン」であるということ。
ITベンチャー周りの人と会うようになって、「コーディングできるから」「Photoshopを使って独学で」という「webデザイナーになろう!」ってスタート地点を持つ方と多く話すようになりました。
そういったwebデザインを最上層レイヤーとした場で語られる内容って、どうしても実務ベースの話やテクニック論になりがち。
俯瞰した話でも「ユーザーファーストのデザインとは?」とか「UXってなに?」って部分までって印象です。
実はそれって、デザイン全体を見た時のほんの一部の話でしかありません。
そうなってくると心配なのがとある問題。
外から見てるデザインを学ぶ人たちには魅力的に映らない
のではないかなと思います。
その理由は、どこでもトップになれる才能を持った学生って、四年間一心不乱に「デザインとは?」を考えに考え抜いているから。
そこで見出した自分のデザイン哲学に沿う勝負・表現の場を探しているからです。
そういった人たちに実務や技術ベースの話って響きづらい。
「デザインといえば」にwebが加わって久しいのに、魅力的な選択肢の一つとしてあげられないままいます。
その理由に技術ベースの語られ方があるんじゃないかなと。
だから僕たちITベンチャーのデザイナーは「デザインとは?」を考え抜かなければなりません。
その上で広告代理店よりもデザイン事務所よりも、僕らのほうが魅力的なんだと発信していかなければならない。
でないと、彼らの選択肢には入り込めないんじゃないかと思います。
世界を豊かにできると信じてデザインの力でサービス推進する僕たちが、「デザインとは?」の答えを持ったうえでwebデザインの魅力を発信し続けること。
世界を豊かにするために、優秀な人をより多く引きこむこと。
それが先行者たる僕らの、大切な仕事の一つなのではないかと思います。
この記事で「デザインとは?」みたいな話をしたい理由は以上です。
じゃあデザインってなんなのさ
ということで、「デザインとは?」に対する、いま現在の僕なりの答えを書いておこうと思います。
やっとデザインの話!
知っての通りデザインは外来語で、本来はdesignと綴ります。
語源はラテン語で、de + signから成るものです。(このへん文献によって諸説ありますが、僕はこの説を信じます。)
deってのは、”because of”, “derived from”, “from”, “according to”などの意味。
signってのはソイツをソレとたらしめる記号です。
なのでdesignは「signを理由とすること」「signの意味を引き出すこと」「signの言うことを理解すること」などなどの意味。
説明がめんどくさいので、いつもざっくり「designとは、signを扱うこと」と言っています。
じゃあそれってなんなのさ?signってなんなのさって話です。
いくつかsignを扱うことの具体的な例を挙げてみます。
signってなにかを理解するために、こんな遊びをしてみましょう
頭のなかに紙を1枚とよく使うペンを1本、用意してください。
できるだけリアルにイメージしてほしいので、下に写真を置いときます。
そしてなんなら本物を机に置いてそれを使っても大丈夫。
用意が出来たら、今から言うものの絵を2秒で簡単にササッと描いてみましょう。
準備はいいですか?
「魚」
どうでしょうか。描けましたか?
いま皆さんの描いた絵に、デザインの正体の大きなヒントが隠されています。
おそらくですが、ほとんどの方の描いた魚が左を向いているはず。
日本人のほとんどが誰に習ったわけでもなく、魚の頭を左に置いてしまうものなのです。
むかし右大臣左大臣っていたように、左のほうが重要度が高いって歴史背景にあるかと思ってます。ご飯が左、味噌汁が右も同じような理由ですね。(違うかもしれないです。)
理由はともあれ、「頭は左側」が魚のもつsignのひとつです。
もしも魚の頭を右においた魚屋があれば、買い物客はそこで無意識のうちに小さな違和感を覚えストレスを感じるかもしれません。
web業界のデザイナーであれば想像に容易いと思いますが、それは売上を落とす可能性にも繋がります。
魚の頭を右に向ける魚売り場はsignを上手く扱えておらず、良いデザインとは言えませんね。
他にもこの情報から多くの手がかりをみつけることができます。
魚の頭は左に向けよう。頭と尻尾、先に目にしたいのは頭であるから店内は右回りに。歩いていて眩しいのはストレスになるので、照明は少し進行方向に傾ける。魚も順光で照らせて良い感じ。レジは最終地点に置くことになるので、出口は店を上から見て右側に。自転車での買い物客が多ければ、自転車置き場は出口の近くに置いてあげたい。
などなど。
signを扱うことができれば、魚屋のレイアウトの大枠が見えてきます。
逆にこれに気づかず店舗デザインを進めると、取り返しの付かない失敗に繋がるかもしれません。
それは空間だけでなく、webや紙でも同じこと。
魚のsignをみつけたら、それを正しく取り扱ってやらないといけません。
牛の話
他のモノゴトのsignをみてみましょう。
例えば牛。
モーモーと鳴くアイツです。
なぜだか理由は知りませんが、コイツらは食事や休憩の際に多くが南北方向を向くとの研究結果があります。
もしあなたが牧場を経営することになったら。
少しでも良質なミルクを生産したい場合、牛にストレスなく気持ちよく生活してもらう方法を考えるでしょう。
であれば、エサ箱は東西か南北かどちらに伸ばすのが正解でしょうか。
牛舎はどうすればいいですか?
対象を観察してそのsignをみつけることができれば、自ずと答えは出てきてしまいます。
ヤカンの話
最後にもう一つ。
signを観察・発見しまとめた例として、建築のフレームワーク「パタン・ランゲージ」というものがあります。
単語が集まって文章となり人を感動させる詩が生まれるように、人の営みを建築の観点から分解したパターンが集まってランゲージとなる。
それらを組み合わせ、生き生きとした建物やコミュニティを形成することができる。
そんな理論をまとめた建築・都市計画にまつわる一つのバイブルです。
その著者であるクリストファー・アレグザンダーは「形の合成に関するノート」で、ヤカンをつくりあげるための21片の要求項目として下記の条件を述べています。
簡単なヤカンのデザインを例にとってみる。彼は、利用するというコンテクストに適合するヤカンを発明せねばならない。それは、小さすぎてはいけない。熱いときに持ち上げにくいものであってはならない。誤って手を放しやすいようであってはならない。台所に収容しにくいものであってはならない。水が注ぎにくいものであってはならない。きれいに注げるようでなければならない。中の湯の冷めるのが早過ぎてはならない。素材が高価すぎてはいけない。沸騰する湯の温度に耐えられるものでなければならない。外側を洗うのが困難すぎるようであってはならない。形が機能を用いるのにあまりに不向きすぎるようであってはならない。それをつくるにふさわしい値段の金属と釣り合わない形であってはならない。時間あたりの人件費ゆえに、組立てに時間がかかりすぎるようであってはならない。その内側は、湯あかをとるのが困難すぎるようであってはならない。水を満たしにくいようであってはならない。たとえ少量の水でも、沸かすのに不経済であってはならない。あまり需要が少ないからといって、そのような需要に対して、適当な方法でつくれないようであってはならない。子供や病弱な人が利用しようとするとき、事故を起こすような間違いやすいものであってはならない。何の警告もなく、空だきが起きるようであってはならない。湯が沸いているとき、ストーブの上ですわりの悪いものであってはならない。
長々ありますが、要するに「この21のsignを満たすものがヤカンですよ」という条件です。
あなたがヤカンをつくりだそうとするとき、上記の要求項目を満たせばそれだけで立派なヤカンができてしまいます。
モノゴトが要求するsignを観察し、理解し、適切に扱うこと。
これがdesignのスタートラインだよ。っていう良い例です。
あらゆるモノゴトがsignを持っています
魚・牛・ヤカンの3つの例を挙げてみました。
もちろんこれらだけでなく、世の中のあらゆるモノゴトが特有のsignを持っています。
それも1つのモノゴトにひとつだけではありません。
さらにサンマなのかメダカなのかのような、細かなカテゴリごとにも異なるsignを持っています。
僕らがサービスを届けたい顧客も、それはもちろん同じ。
大抵は対象が人間でしょうが、年齢・性別・仕事内容などその属性によって持つsignは本当に様々です。
まずはデザインの対象をよく観察して特有のsignを発見する。
そして達成したい目的に合わせて取り扱うsignを適切に取捨選択する。
その行為こそがdesignであり、designerは職業としてsignを取り扱う人たち、なのです。
そう考えていくと、優れたUXなんて目指して当然の前提項目なんだと気付かされます。
みなさんは顧客のsignをしっかりとみつけだし、大切に取り扱ってあげられていますか?
なぜここでdesignerをしているのですか?
またsignを扱ううえで、なぜみなさんは他の数ある手法を差し置いてwebデザインを選択したのでしょうか。
華やかな広告代理店・誰もが知る大手企業のデザイン部門・実力あるデザイン事務所のどれでもなく、webデザイナーを選んでいます。
それはなぜなのか。
僕らのいる世界を思いっきり魅力的に語ることができれば、より多くの才能ある人達が一緒に働いてくれるはず。
それは「サービスで世界をより豊かにしたい」という僕たちの考えと同じ方向を向いているはず。
デザインを知ったうえでwebの魅力を発信する。大切なことだと思います。
僕はこう考えています。だから勝負の場にwebを選びました。
じゃあ僕はなぜwebデザインを選んだのか。
なぜITベンチャーにいるのか。
僕にとってのデザインの正体とは。
webデザインを選んだ理由は、最も多くの人に届けられ最も手軽に受け取ってもらえるからです。
そもそも身に付ける能力としてデザインを選んだのは、
「どうせ働くなら少しでも多くの人を幸せにしたい」という自分の欲求に最も適しているのがデザインだと考えたから。
そして勉強をはじめアレやコレやと手を出しながらデザインについて考えていくうちに、だんだんとその中でも目指す方向性が定まってきました。
本・広告・内装・グラフィック、そしてwebデザイン。
拙いなりにいろんなデザインをやってきましたが、表現手法はすべてデザインのためのツールでしかないと思っています。
その中でもいま現在はwebを使うことが最も多くの人に手が届きます。
そして企業や個人のwebサイトを作るよりも、サービスを育てあげ世界により大きなインパクトを与えるほうがより多くの人を幸せにできます。
これがITベンチャーを選んだ理由。
いまはマーケティングや他のアレコレもおこない、いわゆる「デザイン」と呼ばれるモノを作るための作業をしない日も多くあります。
自分にとっては、それも含めてのデザインです。
僕にとってのデザインの正体とは、
モノゴトが無意識に発信しているsignを観察し、適切に取り扱い、対象を幸せにしていく行為のこと。
あくまで僕はですが、この考えのもとITベンチャーでデザイナーをしています。
みなさんにとってのデザインってなんですか?
たまには「webデザイン」の枠から飛び出して考えてみるのもいいかもしれません。
デザインってなんなんだろう、なんのためのデザインなんだろう。webという手法が本当に最善だったのだろうか。
そんなことを考え抜いたあとに、きっとやっぱり僕らはwebデザインの世界に戻ってきます。
その理由を、webデザインの魅力を少しずつでも発信していくことができれば。
僕らのいる世界はもっともっと豊かになってくれるんじゃないかな、と思っています。
おわりに
そんな僕の在籍するシェルフィー株式会社ですが、デザイナーはもちろんあらゆる分野で積極採用募集中です。
採用目的でもそれ以外でも、シェルフィーにちょっとでも興味を持っていただけたら、ぜひぜひ遊びに来てください。
おみやげなくても大丈夫。あればなお良しです。
ワイワイしたり集中したりしながら、世の中に良いサービスを届けようと頑張ってます。
遊びに来てくれたら、みんなで喜んで歓迎します。
それでは。