”i-Construction”ってなに?国交省が推進する取り組みを日本一わかりやすく解説

はじめに

こんにちは、ブランドマネジメントの鈴木です。
突然ですが、”i-Construction”という言葉を聞いたことはありますか?”i-Construction”は最近の建設業界におけるバズワードといっても過言ではありませんが、今回の記事は「言葉は聞いたことはあるが、実際になにが起きているのか分からない..」「ICTの導入で現場はどう変わるの?」という方に向けて書きました。業界で起きていること(現状の課題)から書いたので少し長くなっていますが、はじまった背景から理解してもらうことでi-Constructionの全容を理解していただけるかと思います。

 i-Constructionとは

i-Construction(アイ・コンストラクション)とは、国交省が掲げる20個の生産性革命プロジェクトのうちの一つで、測量から設計、施工、検査、維持管理に至る全ての事業プロセスでICTを導入することにより建設生産システム全体の生産性向上を目指す取組みです。

国交省は数ある取り組みの中でも下記の3つを「トップランナー施策」として定め、2016年度から本格的に推し進めています。

1.  ICTの全面的な活用(ICT土木)

2. 規格の標準化(コンクリート工)

3. 施工時期の標準化

「i(アイ)」と頭文字がつくこともあり、i-Constructionというと建設業界にICTを導入するための政策だと思われがちですが、ドローンや CIMといったICTの導入が関係するのは上記3つのうち1つのみで、他の2つの施策はあまりICTには関係がありません。

これは、「土木およびコンクリート工の生産性は30年前からほとんど進展していない一方で、両工事に従事している技能労働者は全体の40%を占める」といった事実から、あくまでも「生産性の向上」という目的ありきで優先順位をつけたからだと思われます。

それにしてもこのカッコ付きのネーミングの分かり辛さはさすが霞が関と言わざるを得ませんが笑、国交省大臣も生産性向上の一番の鍵はICT土木であると発言しているため、この記事ではi-Constructionの中でも「1. ICTの全面的な活用(ICT土木)」に絞って、これを4つのキーワードで解説します。

ですが具体的な中身の説明に行く前に、現状の建設業界の課題を把握していなければなぜ国交省がここまでi-Constructionに力を入れているのかは理解できません。そこで本題の解説の前に「なぜ建設業界に生産性の向上が求められているのか」という背景をお話したいと思います。

(国土交通省「i-Constructionの推進」より)

i-Constructionがはじまった背景

 深刻化する人手不足

メディアでも散々報じられている通り、建設業界は深刻化な人手不足に陥っています。近年の新規投資の活発化により建設需要は高まっているのに対し、供給が全く追いついていません。2014年度に153万人いた50歳以上の技能労働者のうち7割以上にあたる110万人が2025年までに離職すると予想されているにも関わらず、29歳以下の労働者は全体の10%以下となっています。

(日本建設業連合会「再生と進化に向けて」より)

3Kからの脱却

この人手不足を解決し、需要と供給を一致させるには、
①働き手を増やす
②一人あたりの生産性を上げる
の2つの方法があります。

「①働き手を増やす」ために外国人労働者の活用も進んでいますが、あくまで期間限定の一時雇用であるため、移民政策が全面的に解放されない限り基幹的な労働力とはならず、移民の受け入れに保守的な日本では実現可能性は低いとみられています。

現状、建設業界で長く働いてくれる人を増やすには、3K(キツい、汚い、危険)と言われてきた労働環境を改善し、若者や女性といったこれまで建設業界を敬遠しがちだった人材を惹き付けなければなりません。

そこで政府は新3K(給与、休暇、希望)を掲げ、ICTを活用し省人化・省力化を実現することで、「②一人あたりの生産性を上げる」方向に力を入れています。これがi-Constructionが声高に叫ばれるようになった背景です。

(国土交通省作成 i-Constructionの推進より)

なぜ建設業界の生産性は低いのか?

下図の通り建設業の労働生産性は製造業よりも相対的に低いまま長期間にわたり推移しています。では「なぜ建設業界は生産性が低いのか?」というと、建設業界には他業界にない3つの特徴があります。

(一般社団法人日本建設業連合会「建設業ハンドブック2016」より)

① 労働集約型の単品受注生産

1つのモノを繰り返し生産することが多い製造業に対し、建設業では受注した現場ごとに内容も期間もバラバラで、同じ工事現場は2つとして存在しません。また屋外に関係者全員が集まって作業を行うことが求められるため労働集約性も高く、製造業で行われてきたような作業の標準化や仕組み化、単純業務のアウトソースによる人件費削減といった取り組みを実施するのが困難でした。

②複雑な分業体制

日本における年間建設投資金額の4分の1は上位50 社の大手ゼネコンが受注しており、これは下請への発注を前提とする多重構造となっていることを示しています。また各種専門工事業者の協力を得ずして仕事をすることは不可能であり、資本金規模の小さい業者であっても、完成工事高に占める外注費の割合は4割を超えています受注金額の規模にかかわらず元請け・下請け・孫請けといった垂直構造と、水道工事・塗装工事・躯体工事といった工事区分ごとの水平構造で細かく分業されているため、1社が生産性を上げようと努力しただけではどうにもならないという特徴があります。

③ 90%以上が中小企業

建設業者のうち、全体の90%以上は年商6 億円以下かつ従業員10名以下の中小企業や個人事業者が占めていると言われています。さらにそのうち半分以上は地方に散らばっていて、地域密着型の経営を行っており、ドローンやBIM・CIMといった最先端の情報が入ってきづらく、たとえ情報が入ってきても新規技術に投資するための資金的余裕がないため、現状維持の傾向にあります

本格始動のきっかけは未来投資会議

こういった状況を加味して、2016年9月12日に開催された第1回未来投資会議にて、安倍総理が建設現場の生産性を2025年までに20%向上させるよう関係省庁へ指示を出し、これが”i-Construction”の本格的なはじまりとなりました。

本日、早速、第一弾として、第4次産業革命による『建設現場の生産性革命』に向け、具体的な方針を決めました。建設現場の生産性を、2025年までに20%向上させるよう目指します。そのため、3年以内に、橋やトンネル、ダムなどの公共工事の現場で、測量にドローン等を投入し、施工、検査に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぐ、新たな建設手法を導入します。(首相官邸HP

i-Constructionを理解するための4つのキーワード

建設業界において生産性向上が求められている背景は理解していただけましたでしょうか?i-Constructionは始まって1年ちょっとの新しい取り組みということもあり、公式資料で使われる言葉の定義や取り組みの内容も日々変化しています。よってこの記事では一つ一つを細かく解説するのではなく、i-Constructionはこの4つを押さえとけばOKというキーワードをご紹介します。

1. CIM

CIMとは”Construction Information Modeling/Management”の略であり、3Dモデルと仕様などの属性情報を一貫して管理する情報システムを指します。先行していた建築分野におけるBIM(Building)に対して、土木分野での取り組みを日本独自の言葉でCIMといいます。

CIMを導入し設計段階から3Dモデルで議論・検討することで、これまでは着工するまで気づかなかった課題や潜在的な問題を顕在化させることができ、業務や工事の手戻りを防ぐことができます。また基本的な属性情報も3Dモデルといっしょに格納できるため、将来的には維持管理業務の簡易化やコストや工期の自動算出も見込まれています。

 

(CIM JAPANより)

2. ドローン

従来の測量方法では数千地点を測量するのに1週間かかっていましたが、ドローンを用いることで数百万地点の測量を15分で完了することができます。さらに写真測量により測量データを3Dで生成することができ、設計・施工計画時に必要な土の量を自動算出するといった省力化にもつながります。

また竣工後においてもドローンを使えば検査に必要な項目を半分にでき、これまでに必要とされていた大量の書類提出が不要になります。たとえば、道路の延長工事では検査書類が50分の1に減ると言われています。

3. ICT建機

これまで土木工事における建機の操縦は「熟練の技」を必要とする非常に難しい仕事でしたが、自動制御が可能なICT建機により、経験の浅いオペレーターや女性でも施工ができるようになります。これにより施工の正確性だけでなく、安全性の向上も見込まれます。

この分野は90年代から先行していたコマツが圧倒的に強く、コマツのICT建機に試乗した石井国交省大臣も「ひょっとして俺は天才じゃないかなどと勘違いする」とその操作性の高さを評価しています。前述した未来投資会議においてもコマツから「スマートコンストラクション」が提案されており、i-Constructionへの導入にも大きく影響を与えていると思われます。

 (ICT油圧シャベル「コマツHP」より)

4.i-Construction推進コンソーシアム

「i-Construction推進コンソーシアム」は、「産学官民の連携」を目的に立ち上がった組織です。国や自治体、建設関連企業がもつ”ニーズ”と大学研究室やメーカーなど卓越した技術を持つ”シーズ”のマッチングを目指しています。

現在1700件以上のニーズが寄せられており、これらとシーズをマッチングして生まれた取り組みを建設現場へ試験的に導入したり、開発助成制度を適用するといったことが予定されています。

(国交省「推進コンソーシアムロードマップ」より)

おわりに

こういった新しいテクノロジーを現場レベルへ導入するには、「ドローンを使ううえでの新たな基準や法律の整備」「高価なICT建機を導入してもらうための投資支援」「ICTに対応できる技能労働者の育成」など解決すべき課題はおちろんたくさんあります。

しかしながら、国交省をはじめとする関係者とお話したところ、i-Constructionは単なるお題目ではなく、関係省庁がかなり力を入れて推し進めている印象を受けました。そして政府のそういった動きに伴い、民間企業も着々と動きはじめています。

シェルフィーも「建設×IT」のスタートアップとして、私たちが一番得意とするWEBやITの分野で建設業界の生産性向上の寄与するべく、これからも打ち手を講じていく所存です。

次回は日本から少し視点をズラして、アメリカにおける建設×ICTがどうなっているのかについて、主にベンチャーやスタートアップに着目して書きたいと思います!(近日公開予定)

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